秋田近代史研究会

秋田県の近現代史を考える歴史研究団体です。

2022年総会・春季研究会終わる、年会費が3,000円に変更される

発表する高橋代表


去る5月 22 日(日)大仙市はなび・アムにおいて 10 時から総会、13 時から春季研究会が開催されました。総会には 6 名の会員が出席。高橋務代表委員を議長として 2021 年度事業報告・決算報告・監査報告、2022 年度事業計画・予算案、会則改正、その他等が話し合われ、決算・予算案等承認されました。
事業計画では研究成果を社会に還元する普及活動の展開について、具体的には郡役所
勉強会の成果を市民に伝える機会を今年度から大仙市で実施したいと説明がありました。
会則改正では、昨年度承認された会計年度変更(10 月1日始まりから4月1日始まり
に変更)にともなう総会開催時期の変更(第四条2「秋」を「春」に)と文言表記の整
理修正(第三条「適応」を「対応」に、第八条「申しで」を「申し出」に)が行われま
した。実は昨年 10 月1日付の会報 192 号には同内容の修正を反映した会則を同封してい
ましたが、正式には総会の承認が必要であると判断したことから今回提案・承認された
ものです。
また第七条1の「会費は年額五千円」を「会費は年額三千円」に変更する提案があり、
承認され今年度から適用されます。提案説明では、事業内容や他研究会の年会費等から
考えて年会費 3,000 円が妥当な金額ではないかとのことです。また不足する収入につい
ては維持会員や寄付を募る、地域文化発展を支援する組織から資金援助を受ける等を検討することにしました。この提案に対しては「大英断である」「収入増加のために文化財保護協会や秋田歴研協等の大会で会誌販売を強力に推し進めてはどうか」「地元大学生への会員募集を積極的に進めるべき」等の意見が出されました。
なお第七条にある「名誉会員」については今年度内に基準要項を作成し、来年度総会
に候補者を提案できるよう検討していきたいとしました。
その他ではロシアのウクライナ軍事侵略に抗議するため、別紙の抗議文をロシア大使
館宛に送ることが承認されました。

13 時からの春季研究会には地元の歴史研究団体等から会員以外の5名の参加があり
ました。最初の報告は荒川肇氏の「郡役所勉強会の取り組みについて」でした。秋田
近代史において研究の蓄積が少ない郡役所について知見を深めるために、2018 年9月
から始めた勉強会は途中コロナによる1年近くの中断を除くと実質2年半の期間に、
26 回実施(昨日5月 21 日実施分も含めて)しました。前半は、「雄勝蚕業学校書類(大
正2年~5年)」(県公文書館蔵)をもとに郡立蚕業学校の申請から設立までの読解を進めました。この読解で国(文部省)・秋田県雄勝郡の文書の流れと管理、処理状況がよくわかりました。また設置場所をめぐる対立で郡内町村対立が大きくなることを文部省が危惧している状況も読み取れました。なお蚕業学校設立を当初中心となって進めた雄勝郡長金子金平が、明治 42 年長野県職員からの出向者であり、もともと蚕業政策に関する専門家であったこと。大正3年長野へ帰県後は丸子町(現上田市)の製糸技術革新と復興に貢献、後に丸子町長となり、地元の工業百年記念公園に顕彰記念碑があることが紹介されました。
後半は明治初期「郡」のあり方について研究状況をフォローするために関係論文の読
み込みをして、そこから得た明治前半期地方制度を見る二つの視点をあげました。一つ
は、法律により地方行政の制度が変わっても一気に根本的に変化するのではなく、町村
行政では江戸自体からのあり方を引きずりながら、新しいものが加わって変化していく
ということ。二点目は、現実に生活している人々の意識と行動は従来のものと新しいも
のが濃淡をもって変化していく。また政府側はそれら民衆の意識や反応、行動に常に注
目し、地方行政の制度設計ではそのことに配慮せざるを得なかったこと。この二つの視
点がポイントであると述べました。
次の報告は佐藤俊介氏の「本荘由利地域史研究会の活動と課題」でした。本荘由利地
域史研究会は本荘由利全域を研究対象として 2007 年に発足、事務局を本荘郷土資料館内に置き、会員 49 名、昨年7月には山下太郎顕彰育英会から地域文化奨励賞を受賞しています。同会代表である佐藤氏から活動内容として総会及び公開講演会(10 月)、フィー
ルドワーク(5月)、年4回の例会、合同研究発表会(7月末または8月初め)、年7回の「会報」発行、毎年の会誌「由理」刊行、歴史資料保全活動等の説明がありました。
年7回にも及ぶ会主催、定期的な会報・会誌発行とパワフルな活動を実施していますが、特に注目されるのは合同研究発表会と歴史資料保全活動でした。合同研究発表会
は本荘由利地区内各地を会場に地元の文化財保護協会等の歴史研究団体と共催で調査
結果や研究成果の発表会を行い、情報交換の場としていることです。地域では個人で
複数の歴史研究団体に加入している例が多いので、このような取り組みは人的ネット
ワークの拡大と歴史・文化財等の情報交換に有効に機能していると感じました。
また歴史資料保全活動は旧家の移転や解体、世代交代による新築等で貴重な古文書
類が消失の危機にあるという危機感から始まり、図書館や資料館等の公的機関に寄贈・
寄託されていない歴史資料の調査・整理活動を行っているとのこと。具体的には古文書
等歴史資料の年代ごと目録作成、一点毎の袋詰め、写真撮影、PCによるデータベース
化、写真プリントのバインダー化等を実施。現在までの調査対象は 24 か所に及ぶという。
完成した電子データとバインダーは歴史資料所蔵者、市教委文化課、本荘郷土資料館に
それぞれ渡され、目録は矢島町郷土史研究会との協力で「由利本荘市歴史資料保全目録」として現在5号まで市教育委員会から発行。この歴史資料保全活動には毎週二日間、本荘郷土資料館を会場に取り組んでいるという。
研究会財政の維持のため、公開講演会や合同研究発表会等の機会を利用して会誌販売
に努力しているとのこと。また目録の発行元や本荘郷土資料館の利用にもあるように行
政との密接な連携も有効であるという。
秋田県少子高齢化の最先進地域であり、高齢化はマイナスイメージがあります。し
かしこの高齢者は元気で歴史好きが多いように私は感じています。また働き盛りの世代
よりも時間的余裕があります(もちろん経済的余裕はありませんが)。そんな高齢者が歴
史研究団体にどんどん加入してテーマをもって取り組んでいけば大きな力になるのでは
ないかと思いました。本荘由利地域史研究会には定年退職後の人たちが多数参加し、歴
史資料保全活動等でも大きな力となっているとの佐藤報告を聞きながら、高齢者を引き
付ける魅力を持つ秋田近代史研究会の視点が今後一層必要となってくると感じました。
(荒川肇)

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