秋田近代史研究会

秋田県の近現代史を考える歴史研究団体です。

2023/総会・春季研究会のお知らせ

今春は異常に早く桜が満開となり、4月下旬には県内各地ほとんど葉桜となってしま
いました。これも地球温暖化の影響でしょうか。県内の新型コロナ感染者は累計で20 万
人を超え、県民4~5人に1人が感染者という状況です。ウィズコロナで日常生活が通
常に戻りつつありますが、油断しないで新型コロナ感染対策にご留意ください。
さて春季研究会を次の内容で行います。2019 年秋季研究会以来の秋田市での実施とな
ります。新型コロナ感染対策にご留意のうえ、多数ご参加ください。


◇日時:5月27日(土)10:00~16:00
◇会場:秋田県生涯学習センター5階和室
秋田市山王中島町1-1 ☎ 018-865-1171
◇総会・研究会日程
10:00 ~ 12:00 総会・情報交換
12:00 ~ 13:00 昼食
13:00 ~ 14:00 報告① 高橋務(秋田近代史研究会)
秋田県の『青年訓練所充当実業補習学校』について」
概要
第一次世界大戦を通じてドイツの青年教育の先進性を認識したイギリスや西欧諸
国は、義務教育を終えた者にさらに継続的に教育し、公民教育、職業準備教育を並
行して行う実業補習教育に力を入れる教育改革に乗り出した。日本も同じ方針で大
正期には格段に実業補習学校の学校数・生徒数は増えた。国の法改正を受けて秋田
県でも大正9年、同11 年には施設要項を作成して制度的な内容整備をはかった。多
くは小学校附設の実業補習学校であった。しかし大正15 年青年訓練所が同様に小学
校に設置されると、青年を対象とした性格の違う二校が小学校に併設されることに
なり、町村や教員の諸負担は増大した。この両校を統合して「実業補習学校」とし
て経営する「充当」という方法が昭和4年に規定されたこともあり、この種の「実
業補習学校」が県内各地に出てきた。この青年訓練所機能をもつ「実業補習学校」
の地域的特徴や充当の在り方、課題を具体的に紹介したい。

14:00 ~ 14:20 質疑応答

14:30 ~ 15:30 報告② 山本祐麻(筑波大学大学院)
「第一次企業勃興期における田口卯吉の実業活動と経済思想
-花岡鉱業会社創立事業を中心に-」


概要
第一次企業勃興期(1886 ― 1889)にかけて、『東京経済雑誌』主宰者の田口卯吉
(1855 ― 1905)は、秋田県北秋田郡鹿角郡を含む北鹿地域において、花岡鉱業会
社を創立したメンバーの一人であった。本報告では、同事業における田口と地方名
望家・産業資本家たちの協働の実態を解明することに重点を置き、彼の経済思想を
総体的に解明する糸口をつかみたい。
明治19 年(1886)、採掘権をめぐり仙北郡の大地主の池田家と、小坂鉱山を経営
する藤田組、そして元士族で同地域の地方名望家である横山勇喜(1852 - 1897)・
古内忠治(生没年不詳)の間で三つ巴の競合がみられた。花岡村戸長(青柳東三郎)
は、産業資本家への転身を模索していた地元士族たちのため、横山・古内による経
営に期待した。そこで両者は、資金調達や設備計画の作成において田口の協力を仰
いだ。その結果、同21 年、田口と横山・古内たちは採掘権の獲得と花岡鉱業会社創
立に至ったのである。
同事業への参画を通じて田口は、地域社会の課題をふまえ、より実践的なイギリ
ス・マンチェスター学派の思想に基づく地域経済発展論を唱導した。具体的には、
政商資本や大地主、その背景にあった農商務省に頼らない自立的な生産-輸送-貿
易が、地方名望家たちの手によって実現可能であると主張したのだ。


15:30 ~ 15:50 質疑応答16:00 閉会行事