秋田近代史研究会

秋田県の近現代史を考える歴史研究団体です。

歴史情報

御布達抜書

◆『明治十二年一月ヨリ 御布達抜書 羽後国仙北郡正手沢村役場戸長 堀江徳治郎』(御
布達書・小作帳01)と『大正六年至大正八年 小作帳』(御布達書・小作帳02)について

昨年 12 月、伊藤寛崇氏から大仙市アーカイブズへ上記史料2点が寄贈され、近日中に公開予定です。
『御布達抜書』は、正手沢村(後大沢郷村に合併)戸長であった堀江が県・太政官・大蔵卿・郡役所・陸軍卿から村宛に発せられた布達の抜き書きや要点をまとめたものです。期間は明治 12 年から 15 年に及んでいます。戸長としての職務遂行の必要上から作成・使用した個人的な記録と思われます。『抜書』の分析から多くの布達の中からどの布達が、また布達中のどの部分が正手澤村戸長にとって必要であったかが読み取れます。

小作帳


『小作帳』は旧大曲町の商人地主板谷五郎左衛門家のものです。板谷家は大正4年
租 1,372 円、所得税 627 円でした。1町歩当の県平均地租(3.96 円)から計算すると 350
町歩近くの農地を所有していたと思われます(『秋田名誉鑑』大正4年 11 月)。『小作帳』には大曲町をはじめ近隣町村の小作地や小作人、小作料、収納状況が記されています。水利が十分でない地域があるせいか、小作料として大豆納入が一定数あったのが意外でした。
何れも伊藤氏が Yahooo オークションでビックリするほど安価に購入したとのことです。私も試しにヤフオクのサイトに入って「秋田県 古文書」と打ち込んでみたら、秋田に関する多方面の膨大な史料がオークションに出品されていることに驚きました。価格は千円未満から数千円台がほとんどでした。貴重な史料がオークションにかかっていること、またそもそも元の所有者からどういう経路で流出してオークションにかけられるまでに至ったのかなど考えさせられました。
これからはオークションサイトからも目が離せないと思っています。

 

◆郡役所勉強会

11 月 19 日、秋季研究会1週間前で報告予定者柴田知彰氏によるプレ報告実施。情報
交換は伊藤寛崇氏から 11 月 27 日秋田テレビ放送予定の「秋田人物伝~町田忠治~」や
同氏作成の『秋田県選挙データ 2022』についての説明あり。
12 月 17 日予定の勉強会は各自所用のため都合がつかず開催せず。
1月 21 日中野良「大正期日本陸軍の軍事演習―地域社会との関係を中心に―」(『史学雑誌』第 114 編第4号、2005 年)を読み始める。情報交換では由利郡西目村長を務めた佐々木孝一郎(1888-1961)、仙北郡大沢郷村長を務めた齋藤正幸(1850-1925)について話題となる。地域指導者として活躍した人物像を歴史的に描き出すことの重要性が指摘された。
毎月第3土曜日 10 時~ 12 時、はなび・アム(大仙市)で実施。希望者はご連絡を。

 

◆『大沢郷村行政日誌』(大沢郷村役場文書1540、大仙市アーカイブズ所蔵)について

郡役所勉強会で話題になった齋藤正幸(1850-1925、大沢郷宿村の田村家に生まれ、同村齋藤家に婿養子)が明治30(1897)年から33 年にかけて記したもの(「仙北郡大澤郷役場」の罫紙に筆書き)
です。齋藤は戸長を務めた後明治22 年大沢郷村初代村長、その後数度村長職にあり、『日誌』作成時もその職にありました。
序には「(行政日誌は)村史ヲ編ムの史料ナリ。後ノ識者行政執務日誌ヲ採リテ以テ村史ヲ編マハ、百世ノ後、百世ノ昔ヲ視ルコト猶今ノ今ヲ見ルカ如クナラン。」とあります。日々の行政執務の記録ですが、村会議決や国・県との往復文書などで重要としたものは内容も記載しています。英照皇太后死去の弔辞や貧民救済のため外米購入、学齢人数と就学人数の調査、義和団戦争の情報と対応、十七連隊演習の感謝状など興味深い記録が多いです。
希望者にはCDに入れたデータを頒布します。下記の荒川までご連絡ください。

◆会員近業

秋田県選挙データ2022』について
秋田県の選挙について、精力的に論文執筆している伊藤寛崇氏が自らの研究のための
基礎データとしてまとめたもので、400 頁以上に及ぶ膨大なデータベースです。貴族院
や衆参議院議員選挙、県会議員選挙、秋田市長選挙、秋田市議会議員選挙、郡会議員選
挙などについて候補者名、党派、得票数などの基礎的な数字を網羅しています。県選出
貴族院多額納税者議員一覧から始まり、平成の大合併16 年後の市長選挙結果(最新は昨
年四月の能代市長選挙)まで収録。多くの興味深いデータがあるが、例えば貴族院多額
納税者議員互選人一覧(明治23 年~昭和14 年)には直接国税納入額の内訳が地租、所
得税、営業収益税毎に記されています。これにより50 年近くのスパンで県を代表する名
望家たちの変動や個別の資産状況の変遷を伺うことができます。伊藤氏一人でデータ収
集・整理をするなど、完成には膨大なエネルギーを費やしたものと思われます。